BAD & BAD【Ⅱ】





私を縛り付ける物がなくなっても、善兄は悠然としていた。



焦りが、消えてくれない。


決して暑くはないのに、背中に汗が流れていった。




『鎖が壊せても、逃げれはしないよ』


善兄はおもむろに、前の方の扉の前に立ちふさがった。



……くそ、やられた。



この教室には、前と後ろに1つずつ扉がある。後ろの方には机が山積みされていて、扉の1つは使えない。そうなると、前の方の扉からしか外に出られない。



その、たった1つの出口を塞がれた。


鎖が外れて喜んでる場合じゃなかった。



『抵抗しないで、僕と一緒にいようよ』


『断る!』


『幸珀は強情だなあ』



どうする、私。

どうやって逃げる?



善兄を出し抜いて……いや無理だ。なんとかして隙を作れたって、扉を通れはしないだろう。


善兄の強さは、身をもって知っている。中途半端な攻撃を仕掛けても、返り討ちにあうだけだ。