真修とはまた今度話をするとして、問題は善兄だ。
善兄は、私と一緒にいたがっている。運悪くここは人気が少なく、悪い行為をするのに絶好の場所。身の危険を感じる。
……大体、整理できた。
私が今すべきこと。それは、戦略的撤退。
逃げるが勝ちだ!
私は様子を窺いながら、速やかに元来た道を引き戻ろうと、路地の方に駆け出した。
だが、善兄には全てお見通しなようで、背後から攻撃を仕掛けられる。
「っ!」
首横に振り下ろされた手刀を、振り向きざまに片腕で止めた。
ふぅ、危なかった。もう少しで首に刺激を与えられ、脳を揺さぶられ、意識を失うところだった。ギリギリセーフ。
善兄にしては珍しい。私が喧嘩を挑まない限り、私を傷つける行動を極力やらないでいたのに。
「前みたいにはいかないか」
善兄がポツリと呟いた。
『前』、それは、3年前のこと。
最悪な事件のこと。
――待って。
あの時のことを蒸し返すってことは、もしかして。
「あんた、また、前みたいなことを……!?」
「はい」
「へ?」
私の勢いを遮った善兄が、私の開いた口に、ポケットに忍ばせていた何かを放り込んだ。