慣れてるというか、自分の美意識が厳しくて細かいだけでしょ。
たかが前髪に、命かけてそうだもん。
「私が切ってあげようか?」
「幸珀が優しい、だと……!?」
「本気で驚くのやめて。地味に傷つく」
弘也はいつも私の何を見てんの。私はいつだって優しいだろうが。
私におずおずとハサミを渡すと、弘也は凛の近くに座った。
「本当に大丈夫なのー?」
「私はハサミを持つとすごいんだぞ」
「……心配になってきた」
すごいって言ってんのに、なぜにここで真顔になるんだよ。ガチで不安になんなくたっていいじゃん。
弘也の前髪をすくい取って、ハサミを広げる。
「はーい、お客さん、じっとしていてくださいねー。今から、前髪をギッザギザに切り刻みまーす」
「ちょいちょいちょーい!!」
弘也が慌てた様子で、私からハサミを奪い取った。



