BAD & BAD【Ⅱ】





慣れてるというか、自分の美意識が厳しくて細かいだけでしょ。


たかが前髪に、命かけてそうだもん。



「私が切ってあげようか?」


「幸珀が優しい、だと……!?」


「本気で驚くのやめて。地味に傷つく」



弘也はいつも私の何を見てんの。私はいつだって優しいだろうが。



私におずおずとハサミを渡すと、弘也は凛の近くに座った。



「本当に大丈夫なのー?」


「私はハサミを持つとすごいんだぞ」


「……心配になってきた」



すごいって言ってんのに、なぜにここで真顔になるんだよ。ガチで不安になんなくたっていいじゃん。



弘也の前髪をすくい取って、ハサミを広げる。



「はーい、お客さん、じっとしていてくださいねー。今から、前髪をギッザギザに切り刻みまーす」


「ちょいちょいちょーい!!」



弘也が慌てた様子で、私からハサミを奪い取った。