「まるで、童話の世界で繰り広げられてた物語そのもののようでした」
ちょっと、弘也!唄子ちゃんが気分良く語ってるのに、舌を出してふざけてんじゃねぇよ!
ちゃんと話を聞け!
「あたし自身が、本物のお姫様になれた気がしました。このままひろちゃんと結婚して幸せになるんだろうなって、期待してたんです」
私も期待してた。せめてセカンドキスは、映画のワンシーンみたいな素敵なものにしたいって。その期待は儚く散っちゃったけど。恨めしい。
唄子ちゃんの期待も散ったようで、「でも」と憂いを孕んだ声色で続けた。
「童話のようにうまくはいかなくて……」
言い淀んだ、頼りなげな背中に、手を添える。
私はね、不良には厳しいけど、か弱い女の子には思いやり精神で溢れてるんだよ。
唄子ちゃんは一度私を見つめると、ハンカチを持つ手にグッと力を込めた。
「ただ、ひろちゃんにあたしだけの理想の王子様になってほしかっただけだったのに、気づいたらひろちゃんを好きなのはあたしだけじゃなくなっていました」
「うん」
「思い描いていた理想が崩壊していくようで、怖くて仕方ありませんでした」
「うん」



