弘也が、唄子ちゃんに一歩近づいた。
「そう、本当の弘也は僕で、こっちが鷹也。僕達の演技、上手だった?」
「なんで、こんなことしたの?」
すぐに完璧な笑顔を貼り付けた唄子ちゃんに、思わず魅了された。
取り乱してもおかしくないのに、ここで笑うなんて……。
なんとなく、幼い頃にお母さんが読んでくれた絵本の『お姫様は、いつも幸せそうに笑っていました』という文章を思い出した。
「あんたの愛が本物かどうか、テストするためだよ~」
「ほ、本物に決まって……」
「さっきので、はっきりしたっしょ?」
唄子ちゃんの声を遮って、威圧的に告げる。
「あんたは僕を好きなんじゃない。初恋に依存してるだけなんだよ」
「ちが……!」
「違う?じゃあ、どうしてキスしなかったの?」
ずるいな、弘也は。
ここぞとばかりに、締まりのある口調をしてる。



