どことなく、善兄の狂気的な執着に似ていると、思ってしまった。
「王子様……?」
「ひろちゃんは、あたしの初恋の人で、王子様なんです」
「う、うん?」
唄子ちゃん、それ、本気で言ってる?
弘也に初恋を捧げて、今もあんなチャラ男を王子様だと勘違いしてるの?
悪いことは言わない。今すぐやめなさい。
「王子様とお姫様は、必ず赤い糸で結ばれているんです。運命の導きによって」
……どうしよ、ついていけない。
王子様とかお姫様とか、比喩で使ってるわけじゃないみたい。
唄子ちゃんって、私よりも乙女思考なんだね。ちょっとイタイけど、可愛いよ。
「まだ、んなふざけたこと抜かしてやがるのか」
「こいつなんかほっといて、早く行こう~」
「ああ、そうだな」
たかやんと弘也が、素っ気なく唄子ちゃんに背を向け、校門へ歩き出した。
唄子ちゃんは2人が大好きそうだけど、対照的に2人は唄子ちゃんが大嫌いそうだ。
私と善兄の面影をかたどっているようで、胸がざわつく。
ここまで深い溝を作ってしまった何かが、昔あったんだろうな。



