BAD & BAD【Ⅱ】





どことなく、善兄の狂気的な執着に似ていると、思ってしまった。



「王子様……?」


「ひろちゃんは、あたしの初恋の人で、王子様なんです」


「う、うん?」



唄子ちゃん、それ、本気で言ってる?



弘也に初恋を捧げて、今もあんなチャラ男を王子様だと勘違いしてるの?


悪いことは言わない。今すぐやめなさい。




「王子様とお姫様は、必ず赤い糸で結ばれているんです。運命の導きによって」




……どうしよ、ついていけない。



王子様とかお姫様とか、比喩で使ってるわけじゃないみたい。


唄子ちゃんって、私よりも乙女思考なんだね。ちょっとイタイけど、可愛いよ。




「まだ、んなふざけたこと抜かしてやがるのか」


「こいつなんかほっといて、早く行こう~」


「ああ、そうだな」



たかやんと弘也が、素っ気なく唄子ちゃんに背を向け、校門へ歩き出した。



唄子ちゃんは2人が大好きそうだけど、対照的に2人は唄子ちゃんが大嫌いそうだ。


私と善兄の面影をかたどっているようで、胸がざわつく。




ここまで深い溝を作ってしまった何かが、昔あったんだろうな。