BAD & BAD【Ⅱ】





一連の仕草が綺麗すぎて、映画の些細なワンシーンのようで目が離せなかった。


自然に、口喧嘩をやめていた。



「朔の無神経さは気にしてないわ」


「2人も座ったら?」



お母さんが私と朔にそう促しながら、いちごさんの隣に腰掛けた。


私と朔は言われた通り、空いているもう1つのソファーに座る。




抵抗のない静寂の中、いちごさんがおもむろに口を開いた。



「親友の、お墓参りに行ってきたの」



いちごさんの長いまつげが、柔らかく伏せられる。


お母さんといちごさんの親友……。



「命日である今日は毎年、マネージャーに頼んで1日オフにしてもらってるの」



仁奈さんの命日は、今日じゃない。


仁奈さんではない、もう1人の親友のことなんだろうな。




「親友って、どんな人だったの?」


「そうね……。幸珀ちゃんに、似てるかもしれないわね」


「私に?」



なんだか、嬉しいな。