一連の仕草が綺麗すぎて、映画の些細なワンシーンのようで目が離せなかった。
自然に、口喧嘩をやめていた。
「朔の無神経さは気にしてないわ」
「2人も座ったら?」
お母さんが私と朔にそう促しながら、いちごさんの隣に腰掛けた。
私と朔は言われた通り、空いているもう1つのソファーに座る。
抵抗のない静寂の中、いちごさんがおもむろに口を開いた。
「親友の、お墓参りに行ってきたの」
いちごさんの長いまつげが、柔らかく伏せられる。
お母さんといちごさんの親友……。
「命日である今日は毎年、マネージャーに頼んで1日オフにしてもらってるの」
仁奈さんの命日は、今日じゃない。
仁奈さんではない、もう1人の親友のことなんだろうな。
「親友って、どんな人だったの?」
「そうね……。幸珀ちゃんに、似てるかもしれないわね」
「私に?」
なんだか、嬉しいな。



