BAD & BAD【Ⅱ】





頭に血を上らせた朔を、真っ直ぐ見据える。


焦ってるなんて、朔らしくないよ?



「ま、まさか、兄貴が……」


「朔!!」



パンッ、と朔の両頬を強めに叩いた。




「っ、……こ、はく」


どう?目ぇ覚めた?



混乱しないでよ。私は、この通り、怪我ひとつなく無事に脱出できた。


今心配されても、今更感半端ないよ。




「縛られてなかったし、ただ1人きりにさせられただけだったから、大丈夫だよ」


「兄貴が、やったんじゃ、ねぇのか?」


「違うよ。善兄にやられたんだったら、こんなに平然としてられないよ」




私の手のひらから朔の頬へ、熱が伝染していく。


たどたどしく、ゆっくりと、肩から朔の手が離れていった。



昼休みに空き教室に戻ってから何も話さなかった私も、ほんの少し悪かったね。


話さなくてもいいかな、って楽観視してたんだ。終わったことだから。



「本当に、大丈夫なんだな……?」


「本当に本当に、大丈夫だよ」



優しく念を押したら、ようやく安堵の息が漏らされた。