可愛い子を見つけたらナンパする、あのチャラい弘也が、こんな美少女を放っておくはずない。


そう、思っていた、のに。

今日は鼻の下を伸ばすどころか、ゆるんゆるんだった表情を険しくさせている。



たかやんだって、冷静で真面目なのが取り柄なのに、美少女を目にした途端明らかに動揺している。


2人とも、どうしちゃったの?




「なんで、お前がここにいるんだよ……っ」



女の子相手に、こんなに荒々しくなっている弘也を、初めて見た。



「メール、見てないの?」


「見る前に消去した」

「右に同じ~」



唄子ちゃんと大宮ツインズの狭間に、隔てられている境界線に、違和感と疑念を抱かずにはいられない。


剛は、2人がこうなっている背景を知っているのか、2人の異質な状態を汲み取って、美少女を静かに睨みながら観察していた。




「先月、こっちに引っ越してきたの。今日からあたしもここの生徒なんだ。そこにいる十蔵寺【ジュウゾウジ】くんと同じクラスなんだよ」



唄子ちゃんは弘也のきつい態度に怯えることなく、にっこり笑顔だった。



転校生だったんだ。

そりゃそうだよね。こんな可愛い子がいるなら、私が知らないはずがない!




唄子ちゃんの制服は、前の学校のものなのか、ブレザーではなくセーラーだった。


セーラー服がここまで似合う女の子、そうそういない。写メ撮って、日本中に見せびらかしたい。