そういえば、夏休みに遊園地に行った時も、この間繁華街でナンパされてた時も、唄子ちゃんは弘也を探していたっけ。懐かしいな。
「なんでこんなにすれ違っちゃうんでしょう」
「な、なんでなんだろうね」
それは弘也が唄子ちゃんから逃げてるからなんじゃ…………いや、言わないでおこう。
ふと考えたんだけど、弘也が唄子ちゃんに自分のクラスを教えるかな?嫌ってる人に自分の情報を無闇に教えない、よね?
っていうことは、唄子ちゃんが自ら調べたの?
……前々から、唄子ちゃんは根性あるなって思ってたよ。
「弘也なら、さっきまで一緒にいたけど」
直後、唄子ちゃんの目つきが豹変した。
「2人で、ですか?」
「まさか。たかやんと剛と朔も一緒だよ」
「なんだ。そうですよね。変なこと聞いてすみません」
着目するところ、そこなんだ。
たかやん、ここにいるよ。私をライバル視してる子が。
「……でも、そっか。あたしはひろちゃんに会えないのに、幸珀先輩はひろちゃんと昼休みを過ごしてたんだ。……そっかあ」
ボソッと独り言を呟く、唄子ちゃんを覆っているオーラが、どことなく不気味で。
体感温度が、一気に下がった気がした。



