鼻歌を歌いだしそうな私に、剛が顔色を曇らせた。
「さっき間違えたことに逆ギレして、弘也に何かしようとしてんじゃねぇだろうな。悪ふざけすんなよ」
「どんだけ私の性格を悪く思ってんの。何もしないよ」
「連続殺人犯並みに悪いと思ってますけど?」
「ふざけんな」
今すぐ考えを改めろ。
私は聖母並みに性格が良いんだっ!
大宮ツインズの後ろで剛と言い争っていたら、高くて艶やかな声音が廊下に響き渡った。
「ひーろちゃーん!」
「うげ」
恐る恐る振り返った弘也に、背後から両手を広げて突進してきた唄子ちゃん。
朝から大胆だね。
あ、唄子ちゃんが着てる制服、セーラーじゃなくてブレザーだ。ブレザー姿も可愛いな。
弘也に絡みつきながら挨拶をしてきた唄子ちゃんの腕を、乱暴に振り払う。
「くっつくな」
地を這う、ドスのきいた声。



