BAD & BAD【Ⅱ】






我慢は、もう、おしまい。




「たかやん、行くよ」


「おう」



私は、カウンターキッチンを飛び越えて。

たかやんは、キッチンの横を通って。


師匠が傷ついてしまう前に、2つの方向から、京ママと師匠の元へ急いで駆け寄った。



しかし、たかやんが床に落ちていたタオルに足を滑らせ、派手に転んでしまった。



「えええええ!?」


「いっつ……」



何やってんの、たかやん!

ここで転ぶ!?


想定外だよ!間抜けすぎるよ!



キッチンの奥から、剛の笑い声が聞こえてくる。



「わははっ、鷹也だっせぇ!」


「う、うっせぇ」



剛、笑ってる場合じゃないでしょ!?



転んだたかやんに気を取られ、京ママと師匠の元にたどり着くのが、コンマ数秒遅くなってしまった。


だが、師匠が想定外のハプニングに応じて、両手で椅子の脚を受け止めてくれていたおかげで、まだ師匠の体に傷は増えていない。