我慢は、もう、おしまい。
「たかやん、行くよ」
「おう」
私は、カウンターキッチンを飛び越えて。
たかやんは、キッチンの横を通って。
師匠が傷ついてしまう前に、2つの方向から、京ママと師匠の元へ急いで駆け寄った。
しかし、たかやんが床に落ちていたタオルに足を滑らせ、派手に転んでしまった。
「えええええ!?」
「いっつ……」
何やってんの、たかやん!
ここで転ぶ!?
想定外だよ!間抜けすぎるよ!
キッチンの奥から、剛の笑い声が聞こえてくる。
「わははっ、鷹也だっせぇ!」
「う、うっせぇ」
剛、笑ってる場合じゃないでしょ!?
転んだたかやんに気を取られ、京ママと師匠の元にたどり着くのが、コンマ数秒遅くなってしまった。
だが、師匠が想定外のハプニングに応じて、両手で椅子の脚を受け止めてくれていたおかげで、まだ師匠の体に傷は増えていない。



