BAD & BAD【Ⅱ】





ずっと、師匠は独りで闘い続けていたんだ。


昨日までは。



「母さん、暴れないで!!」



壁際に逃げた師匠の方へ、ゆらりゆらりと京ママが移動する。



作戦、通りだ。


今師匠がいる場所が、1番撮影しやすいっていうことは、事前に調査済み。



「母さん!」


「……」


「母さんっ!」



頑張ってください、師匠。

あともうひと踏ん張りです。



京ママがまた、椅子を振り上げた。無機質な殺人ロボットのようで、ゾクッとする。



師匠に逃げ場は、ない。


それも承知の上で、撮影しやすいその場所を作戦に組み込んだ。



「っ、やめて、母さん!!」



京ママはぼうっとしながらも、師匠に向けて、椅子を持つ手を勢いよく振り下ろした。