ずっと、師匠は独りで闘い続けていたんだ。
昨日までは。
「母さん、暴れないで!!」
壁際に逃げた師匠の方へ、ゆらりゆらりと京ママが移動する。
作戦、通りだ。
今師匠がいる場所が、1番撮影しやすいっていうことは、事前に調査済み。
「母さん!」
「……」
「母さんっ!」
頑張ってください、師匠。
あともうひと踏ん張りです。
京ママがまた、椅子を振り上げた。無機質な殺人ロボットのようで、ゾクッとする。
師匠に逃げ場は、ない。
それも承知の上で、撮影しやすいその場所を作戦に組み込んだ。
「っ、やめて、母さん!!」
京ママはぼうっとしながらも、師匠に向けて、椅子を持つ手を勢いよく振り下ろした。



