京ママの顔つきがまるで別人みたいに凍てついていて、思わず息を呑んだ。
怒りと苦しさでどうにかなってしまいそうな、無情で非情な顔つき。
「か、母さん……!」
「……っ」
必死に呼びかける師匠にイラつきを覚えたように、乱暴に椅子を倒される。
続けてグラスと日本酒の瓶を床に落とそうとしたが、師匠が咄嗟にキャッチしたおかげで割れずに済んだ。
ナイスです、師匠!
師匠はグラスと日本酒の瓶をキッチンに避難させてから、京ママの肩を掴んだ。
「母さん、やめてよ!」
何を言われても、京ママは口を開かなかった。
酒乱の人って、よく暴言を言ったりするらしいのに、京ママは言わないんだ。
なんでなんだろう。
記憶のない酒乱状態になってもなお、息子への愛情を忘れていないから?
「母さん!……うわっ」
京ママは鬱陶しそうに、師匠を突き放した。
その拍子に、さっきまで自分が座っていた椅子に、背中をぶつけてしまう。



