BAD & BAD【Ⅱ】





卓上にこぼれたお酒を、台ふきで拭いてあげた師匠は、わかりやすく表情を曇らせた。



……そろそろ、なのかもしれない。


私は剛とたかやんの肩を軽く叩いて、兆しの合図を送った。




「ふふ、ふ……」



京ママは、満杯に注いだ日本酒を一気に飲み干し、うっすら笑う。


その笑い声はだんだんと消失していった。



とろんとしている京ママの目を、一度瞼が覆った。



「っ!」

くる。



本能で、悟った。

カラカラになった喉元を、生唾で潤す。




瞬間、京ママの瞼がスッ、と持ち上げられた。



「母さ、」


――バンッ!!



師匠がかけた声を遮って、京ママはダイニングテーブルを思い切り強く叩きながら立ち上がった。