卓上にこぼれたお酒を、台ふきで拭いてあげた師匠は、わかりやすく表情を曇らせた。
……そろそろ、なのかもしれない。
私は剛とたかやんの肩を軽く叩いて、兆しの合図を送った。
「ふふ、ふ……」
京ママは、満杯に注いだ日本酒を一気に飲み干し、うっすら笑う。
その笑い声はだんだんと消失していった。
とろんとしている京ママの目を、一度瞼が覆った。
「っ!」
くる。
本能で、悟った。
カラカラになった喉元を、生唾で潤す。
瞬間、京ママの瞼がスッ、と持ち上げられた。
「母さ、」
――バンッ!!
師匠がかけた声を遮って、京ママはダイニングテーブルを思い切り強く叩きながら立ち上がった。



