BAD & BAD【Ⅱ】





キッチンに潜んでいる私達は、誰1人として、温もりを感じていなかった。



あそこだけを切り取ったら、涙腺崩壊確実の感動シーンだ。


だけど現実は意地悪で、それが理だとでも教えるかのように、裏がある。




私達は、知っている。

師匠がどんな気持ちで、どんな想いで、ああ伝えたのかを。




「もうっ、嬉しいこと言ってくれちゃって!」


「わわっ」



京ママは頬を赤らめながら、師匠の頭をぐしゃぐしゃっと撫で回した。



嬉しそうだなぁ。


当たり前か。息子に自慢だと褒められて、喜ばない親はいない。



「京くん、ありがとう」



“いつか”の願望を夢見続けながら、秘密を忍ばせていたはずなのに。


師匠は一切、表側に裏側をほのめかさない。



慣れて、しまったのだろう。




……私、勘違いしてた。


師匠の覚悟は、思っていた以上にあきらめ悪くて、しぶとい。



恐れ入ったよ。

これだから、師匠の弟子はやめられないんだ。