BAD & BAD【Ⅱ】






「師匠、改めて聞きます」

「なに?」



4つのコップを洗い終えた師匠を、鋭利な眼差しで射た。


軽快さが蒸発したリビングに、問いかけを投下する。



「覚悟は、できていますか?」



答えは、昨日と同じだった。



「うん」



たったそれだけ呟いて、首を縦に振った師匠は、目をふにゃりと細めた。


腫れの引いた目元が、穏やかさを醸し出していた。




……あぁ、今。

消えた境界線の代わりに、「キラキラ」が舞い降りた。





師匠が指示通りに、ダイニングテーブルの上に日本酒と京ママ用のグラスを出したタイミングで、

京ママがお風呂から上がって、部屋着になって再びリビングに来た。



京ママは師匠にお礼を告げながら、椅子に座った。


乾ききっていない京ママの髪の先から、ポタリポタリ、雫が滴り落ちる。




「ちゃんと乾かさないとダメじゃん!風邪引いちゃうよ?」


「うっ、だ、だって……」


「言い訳禁止!」


「……はあい」