「師匠、改めて聞きます」
「なに?」
4つのコップを洗い終えた師匠を、鋭利な眼差しで射た。
軽快さが蒸発したリビングに、問いかけを投下する。
「覚悟は、できていますか?」
答えは、昨日と同じだった。
「うん」
たったそれだけ呟いて、首を縦に振った師匠は、目をふにゃりと細めた。
腫れの引いた目元が、穏やかさを醸し出していた。
……あぁ、今。
消えた境界線の代わりに、「キラキラ」が舞い降りた。
師匠が指示通りに、ダイニングテーブルの上に日本酒と京ママ用のグラスを出したタイミングで、
京ママがお風呂から上がって、部屋着になって再びリビングに来た。
京ママは師匠にお礼を告げながら、椅子に座った。
乾ききっていない京ママの髪の先から、ポタリポタリ、雫が滴り落ちる。
「ちゃんと乾かさないとダメじゃん!風邪引いちゃうよ?」
「うっ、だ、だって……」
「言い訳禁止!」
「……はあい」



