隠れることには、もう1つ、理由がある。
京ママが暴走したら、ビデオカメラを壊される危険性がある。なので、隠密に行動するのが1番だと判断したんだ。
既に、弥生家をなんとかしよう大作戦は、幕を開けている。
始まりは、いつだって突然なのだ。
「お風呂入ってくるわね」
京ママはリビングを出ていこうとしたが、直前で「あ、それと」と足を止めた。
「棚にある日本酒、出しておいてくれる?」
「……わかった。準備しておくよ」
それって、京ママは今日もお酒を飲むってことだよね?
私達はこっそりガッツポーズをした。
京ママは私達に気づいていないみたいだし、いい流れで作戦が進んでるぞ。
「剛、カメラは?」
「いつでも撮れるぜ」
「じゃあ、京ママが戻ってきたら、撮影開始してくれる?」
「ん、了解」
カウンター式になっているキッチンの端っこからビデオカメラのレンズが飛び出るように、完璧な位置取りをした剛が、オッケーサインで準備完了を表した。
これで、リビング全体を撮影できる。



