BAD & BAD【Ⅱ】





師匠は空になった4人分のコップを持って、私達のいるキッチンに来た。


私達の姿が京ママから見えないように、壁になってくれているのだ。



水道から水が流れる音と、つけっぱなしのテレビの音量が、混ざり合う。


師匠が2つ目のコップを洗っていると、リビングに京ママがやって来た。




「母さんおかえりなさい。仕事お疲れ様」


「京くん、帰ってたの?」


「うん、夕方頃にね」


「友達とのお泊りはどうだった?」


「すっごく楽しかったよ」




カウンターの隅から、ダルそうにダイニングテーブルにカバンを置いた、京ママを盗み見た。



あれが、師匠のお母さん……。



イメージそのままに、かっこよくて、綺麗で。


仕事のできる女というオーラが、外見から滲み出てる。



でも、どことなく、師匠と面影が重なる。

やっぱり親子なんだなぁ。



「母さん、夕飯はいる?」


「外で食べてきたからいいわ。ありがとう」



京ママは、私とたかやんと剛がこの家にいることを知らない。



私達が遊びに来ていると知られれば、京ママが飲酒する確率が激減してしまう。


だから、私達の靴や荷物などの私達がここにいる証は、全てキッチンの隅に隠してる。キッチンに、いい死角があって助かった。