師匠は空になった4人分のコップを持って、私達のいるキッチンに来た。
私達の姿が京ママから見えないように、壁になってくれているのだ。
水道から水が流れる音と、つけっぱなしのテレビの音量が、混ざり合う。
師匠が2つ目のコップを洗っていると、リビングに京ママがやって来た。
「母さんおかえりなさい。仕事お疲れ様」
「京くん、帰ってたの?」
「うん、夕方頃にね」
「友達とのお泊りはどうだった?」
「すっごく楽しかったよ」
カウンターの隅から、ダルそうにダイニングテーブルにカバンを置いた、京ママを盗み見た。
あれが、師匠のお母さん……。
イメージそのままに、かっこよくて、綺麗で。
仕事のできる女というオーラが、外見から滲み出てる。
でも、どことなく、師匠と面影が重なる。
やっぱり親子なんだなぁ。
「母さん、夕飯はいる?」
「外で食べてきたからいいわ。ありがとう」
京ママは、私とたかやんと剛がこの家にいることを知らない。
私達が遊びに来ていると知られれば、京ママが飲酒する確率が激減してしまう。
だから、私達の靴や荷物などの私達がここにいる証は、全てキッチンの隅に隠してる。キッチンに、いい死角があって助かった。



