BAD & BAD【Ⅱ】





短い針は、「8」を示していた。



もう8時を過ぎていたんだ。

京ママはまだ帰ってこないのかな。




時計とにらめっこしていた、その時。



――コツ、コツ、と靴の音が玄関の方から、なぜか明瞭に聞こえてきた。



こんなにはっきりと聞こえるはずがない。幻聴か何かか?


それとも、私の相棒の直感くんが教えてくれたの?



心臓が、軋むように跳ねる。




すると今度は、ガチャガチャと玄関の扉の鍵をいじる音が、うっすらとリビングに届いた。


その音は私だけでなく3人の耳にも伝わったようで、一瞬で空気が張り詰めた。



「母さんが帰ってきたんだ……!」



師匠は焦りながら、スナック菓子のゴミを捨てた。



私とたかやんと剛は、顔を見合わせて小さく頷いてから、所定の位置につく。


キッチンの奥の方で、極力気配を消しつつ、息をひそめた。



剛の手には、最新型のビデオカメラがきっちりセットしてある。