短い針は、「8」を示していた。
もう8時を過ぎていたんだ。
京ママはまだ帰ってこないのかな。
時計とにらめっこしていた、その時。
――コツ、コツ、と靴の音が玄関の方から、なぜか明瞭に聞こえてきた。
こんなにはっきりと聞こえるはずがない。幻聴か何かか?
それとも、私の相棒の直感くんが教えてくれたの?
心臓が、軋むように跳ねる。
すると今度は、ガチャガチャと玄関の扉の鍵をいじる音が、うっすらとリビングに届いた。
その音は私だけでなく3人の耳にも伝わったようで、一瞬で空気が張り詰めた。
「母さんが帰ってきたんだ……!」
師匠は焦りながら、スナック菓子のゴミを捨てた。
私とたかやんと剛は、顔を見合わせて小さく頷いてから、所定の位置につく。
キッチンの奥の方で、極力気配を消しつつ、息をひそめた。
剛の手には、最新型のビデオカメラがきっちりセットしてある。



