剛には、一刻も早くおじいさま呼びを直してほしい。
ロックな外見の剛がおぼっちゃまなことにさえ爆笑なのに、おじいさま呼びまでされたら、ツボに入って抜けなくなるから。
ほんっとに似合わないよ!
うさぎとドラゴンくらい、似合わないよ!
せめて「お」を消して、じいさまって呼んでよ。……いや、やっぱそれもウケるわ。あはは!
「ひぃー、笑いすぎてお腹痛い」
「このあと作戦を実行すんのに、緊張感のねぇ奴だな」
「えー、だって、剛がおじいさま呼びしたら笑っちゃわない?」
「笑わねぇよ」
師匠と同時に床に座ったたかやんが、オレンジジュースを飲みながら、横目に能天気だと言いたげに私を睨んでくる。
うっそだー。たかやんも内心笑ってるんじゃないのー?
剛が、首長の顔を眺めたくなくてチャンネルを変えたら、テレビから愉快な笑い声が響いた。
それに負けないくらいの賑やかさで、私達はしょうもないことを駄弁りながら団らんしていた。
気づけば、辺りはオレンジ色から藍色へ、塗り替えられていた。
暗くなったリビングに、師匠が電気を点けた。
私は明かりを漏らさぬようにカーテンを閉めながら、時計を見る。



