壁についた小さな傷“跡”に、そっと触れてみる。
最近ついた傷かな。
何でどうやってついたのかはわからない。
だけど、この傷からわかるのは、壁をも傷つけるくらい京ママの暴走はひどい、ということだ。
そんな情報を今更掴んだって、さして意味はない。
作戦の実行が延期になることも、内容が変更になることもないのだから。
影響があるとすれば、私のやる気を上昇させたことくらいだ。
「弥生家をなんとかしよう大作戦のシミュレーションと最終確認して、京ママの帰りを待とうか」
「ああ、そうだな」
私の言葉に、たかやんが頷く。
師匠と剛も顔つきを険しくさせて、作戦への意志をあらわにした。
京ママの帰宅時間は、午後7時から10時。
つまり、京ママが家にやって来るのは、その3時間の間。なんちゅうアバウトな。もっと絞れなかったのか、師匠のバカ。
現在の時刻は、午後4時。最低でも3時間も余裕がある。これなら、たっぷり最終確認ができそうだ。
よどみなく作戦が進められるように、念入りに準備をしておきたかったからちょうどいい。



