BAD & BAD【Ⅱ】





思い違いでよかったです。



師匠があきらめモードになってたら、どうしようかと思っちゃいましたよ。


あきらめてないなら、あきらめ悪そうな顔してくださいよ。



師匠に、暗い顔は似合いません。




「ねぇ、師匠」


「なに?」


「別にいいんじゃないですか、勇者みたいなヒーローにならなくても」


「……え?」


「私は師匠らしい、師匠なりのヒーローになれば、それでいいと思いますよ」




ゲームの主人公のように、世界征服を企む魔王と闘ったり、壮大な世界を冒険したりすることはないんだから、わざわざ非日常を生きる勇者になろうとしなくていいんだ。ていうか、絶対になれないから、目標にするのやめとけ。



私も、最近までヒーロー的存在になれなくてもがいていたけど、皆のおかげで気づけた。


傷つけても傷ついても、守りたいと思える仲間がそばにいるんだって。




なんでもできなくていい。


不器用でも、完璧じゃなくても、間違ってもいい。


ダメなところを補える、仲間がいる。



だから、誰かを真似するんじゃなくて、自分らしく突き進んで。




「それに、師匠は今でも十分かっこいいですよ」


「最高にな」


「幸珀、凛……!」



家族のために悩んで、苦しんで、抗って、泣いて、どうにかしたいと心の底から望んでいる。


そんな、家族思いで優しくてかっこいい、我らが自慢の総長の師匠に、私達は全力で手を貸そう。




たったひとつの、涙ぐんだ願いを叶えるために。