思い違いでよかったです。
師匠があきらめモードになってたら、どうしようかと思っちゃいましたよ。
あきらめてないなら、あきらめ悪そうな顔してくださいよ。
師匠に、暗い顔は似合いません。
「ねぇ、師匠」
「なに?」
「別にいいんじゃないですか、勇者みたいなヒーローにならなくても」
「……え?」
「私は師匠らしい、師匠なりのヒーローになれば、それでいいと思いますよ」
ゲームの主人公のように、世界征服を企む魔王と闘ったり、壮大な世界を冒険したりすることはないんだから、わざわざ非日常を生きる勇者になろうとしなくていいんだ。ていうか、絶対になれないから、目標にするのやめとけ。
私も、最近までヒーロー的存在になれなくてもがいていたけど、皆のおかげで気づけた。
傷つけても傷ついても、守りたいと思える仲間がそばにいるんだって。
なんでもできなくていい。
不器用でも、完璧じゃなくても、間違ってもいい。
ダメなところを補える、仲間がいる。
だから、誰かを真似するんじゃなくて、自分らしく突き進んで。
「それに、師匠は今でも十分かっこいいですよ」
「最高にな」
「幸珀、凛……!」
家族のために悩んで、苦しんで、抗って、泣いて、どうにかしたいと心の底から望んでいる。
そんな、家族思いで優しくてかっこいい、我らが自慢の総長の師匠に、私達は全力で手を貸そう。
たったひとつの、涙ぐんだ願いを叶えるために。



