「師匠が憧れている2次元も、ゲーム上の登場人物もフィクションなんですから、3次元を生きてる非力な人間が、ファンタジー設定のなんでもできるヒーローになれるわけないじゃないですか」
「だけど、パーカーマンは無敵のヒーローだよ?」
「私は師匠や他の皆と違って、特別なんです」
はちゃめちゃ軍団と一緒にしないでほしい。
素材が違うんだよ。
特別仕様な私だって、できないことくらいある。
現に、以前、ヒーローになれなくて悪役になった。
ガッツがあればどんなことだってできる、そういうド根性精神が通用するのは、フィクションの中だけ。
がむしゃらに頑張ったって、報われないことはいくらでもある。そりゃあもう、数え切れないくらい、たっくさん。
それが、非常に残念ながら、不平等と理不尽で塗り固められた現実というものだ。
けどね、報われることだって、ちゃんとあるんだよ。
「憧れたりしょぼくれたりするのは一向に構いませんが、今まで独りで懸命に頑張ってきたのに、そう簡単にあきらめないでください」
「あきらめてなんかないよ!」
師匠の反論が大部屋に響いて、私は密やかに口角を上げる。
「……あきらめたくないから、皆に『助けて』ってお願いしたんだ」
「だったら、暗い顔しないでください」
「痛っ」
人差し指で、師匠の額をツンと弾いた。



