「……でも、無理だった」
「師匠……」
「母さんを変えることも、傷を無くすこともできなかった」
現実は、残酷だ。
どれだけ良いことをしていても、いたずらに幸せを奪っていく。
「俺は、勇者のようなヒーローには、一生なれないのかな……?」
例えるなら、きっと。
誕生日プレゼントのゲームが、師匠の努力の素で、悲鳴を押さえつける枷だった。
だけど、ゲーム機が破壊されて。
割れた画面から、キラキラ輝いていた努力の素が消えて、我慢と良心と悲嘆を縛っていた枷が砕かれて。
たがが外れたのだろう。
俺ならできる、なんとかなる。
そう自己暗示していた呪いが解け、昔から飲み込んでいた涙が絶え間なくこぼれていった。
目を背け続けてきた現実は、ゲームのように思い通りにはいかない。
「悲劇のヒロインぶらないでください、師匠」
「ヒロイン?俺、男だよ?」
真面目に返さないでください。
ここは、誰がヒロインだ!、とつっこむところです。



