これ以上、負担やストレスをかけたくなくて。
お母さんに何も言わなかった、言えなかったのかもしれない。
師匠は好青年中の好青年で、世界で1番と言っても過言ではないくらい、優しいから。
「そんなある日、小学校低学年くらいの頃だったかな、母さんが誕生日プレゼントにゲーム機とゲームソフトをくれたんだ。それまであんまりゲームをやったことがなかったんだけど、プレゼントしてくれたゲームがすっごく面白くて、すぐにハマったんだ」
「師匠のゲーム好きは、そこから始まったんですね。……その大事なゲーム機を、誰かさんが壊してしまいましたが」
「ほ、本当にごめんなっ!」
スライディング土下座しそうな勢いで、何度目かの懺悔をした弘也に、師匠は「本当にもういいよ!大丈夫だよ!」と慌てて弘也をなだめた。
師匠の心は、海のように広いなぁ。
私だったら、絶対に許さない。私ならとりあえず、往復ビンタの刑に処すかな。あくまで、とりあえずね。
「うぅ~、京が桃太郎や幸珀みたいに短気でバカでねちっこくない、すんごく優しい奴でよかったよぉ~」
「おい弘也、てめぇ、なに私の悪口言ってんの?そんなに殴られたいの?ほう、そうかそうか。ならお望み通り殴ってあげるよ。どこ殴られたい?え?顔?おっけ、わかった」
「僕、一切返事してないよ!?」
「俺にも殴らせろ」
「桃太郎も!?お願い、やめてー!」
「……こいつらはほっといて、話を続けてくれ、京」
私と桃太郎と弘也の物騒な口論を、たかやんが軽率にスルーした。



