BAD & BAD【Ⅱ】





内側を晒すのは、とてもとても辛いだろう。



でも、そうすると決めたのは師匠自身だ。


だったら、途中放棄せずに、最後までやりきらないといけない。



その代わり、私達も最後までちゃんと聞いてあげる。




……難しい?

ううん、きっと、難しくない。


もしも難しいと感じているのなら、それは単なる勘違いだ。



潜めていた内側を、私達に明かすだけ。


それだけのことなのだから。





どのくらい経っただろうか。


30分か、それともたった1分だったのか。



ここにいる誰もが、空白の面積なんか気にも留めていなかった。


それくらい真剣に、ただただ静かに、私達は師匠のことを見守っていた。




長さの不明な沈黙を、師匠の細い吐息が断ち切った。


吐き出された息に、師匠の弱さと強さが垣間見えた気がした。



「母さんはね、普段はすごく優しくて、自慢の母親なんだ。……なのに、お酒を飲むと、乱暴で暴力的になる」



続きが紡がれる度、師匠の叫びが心臓に直接轟く。


助けて、助けてって叫びが、何度も。