でも、1人では無理でも2人なら、あの曲者を黙らせられるかもしれない。
だから、朔はもっとしっかりしてほしい。切実に、もっと頼れるボディーガードになってほしい。私より強くなってこい。
ちなみに、真修は善兄を尊ぶことをやめた程度で、私や朔よりは嫌っていないようだ。
「昨日いきなりこっちに戻ってくるって連絡してきたけど、なんで兄貴がここにいんだよ」
「幸珀、今から2人きりになれる場所に行こうか」
「行くわけないでしょうが、この変態っ」
「だから、俺を無視すんなっつってんだろ!?」
昨日実家に戻ってきたの?
この間廃校で会った時は、わざわざこの町に足を運んだってこと?
そういえば、あの時。
『……まいっか。どうせもうすぐわかることだし』
なんてことを、言っていた。
今スーツ姿でここにいることと、手紙に綴ったらしい『もうすぐわかること』は、無関係じゃなさそうだ。
8月下旬に、廃校で善兄と対峙したことは、朔には話していない。
NINAのことは、話したくなかった。
NINAは、円堂家にとって大切な名前だから、幼なじみであってもペラペラ喋りたくない。
それに、善兄のことを報告するのは、いつだって苦しくて不快で。
あの時のことは、もう、無かったことにすると決めた。
「どうして善兄がここにいるの?」
「教育実習しに来たんだ」
「……俺が聞いた時は答えなかったくせに、このやろう」
え?
善兄が、教育実習生?
まじっすか?



