BAD & BAD【Ⅱ】





パーカーの下に刻まれた、無残な傷。


それを意識する師匠が、ひどく苦しげで。




また、境界線を感じた。



高くて、分厚くて、冷たい壁に遮られた向こう側を、なんとなくという曖昧な憶測でしか知らない。


知らなくていいんだ。



師匠が独りで、話したいと思えるまで。




自分から「もーういいよー」と手を伸ばしてくれたら、ちゃんと答えるから。


たとえ、そんな日がやってこないとしても、構わないから。



だから、それまでは。

背負っているものを隠しながら、精一杯泣いていいよ。



涙は、隠さなくてもいいんだよ。





「桃太郎、ハンカチ持ってる?」


「ああ、持ってるけど」


「ちょっと貸してくれない?」



桃太郎は不思議そうにしながら、私にハンカチを貸した。



えー、どうせ私は持ってませんよ。女子力ないですよ。それが何か?


私の中で女子力が絶滅しかけてるのを、感じたり感じなかったり……。