パーカーの下に刻まれた、無残な傷。
それを意識する師匠が、ひどく苦しげで。
また、境界線を感じた。
高くて、分厚くて、冷たい壁に遮られた向こう側を、なんとなくという曖昧な憶測でしか知らない。
知らなくていいんだ。
師匠が独りで、話したいと思えるまで。
自分から「もーういいよー」と手を伸ばしてくれたら、ちゃんと答えるから。
たとえ、そんな日がやってこないとしても、構わないから。
だから、それまでは。
背負っているものを隠しながら、精一杯泣いていいよ。
涙は、隠さなくてもいいんだよ。
「桃太郎、ハンカチ持ってる?」
「ああ、持ってるけど」
「ちょっと貸してくれない?」
桃太郎は不思議そうにしながら、私にハンカチを貸した。
えー、どうせ私は持ってませんよ。女子力ないですよ。それが何か?
私の中で女子力が絶滅しかけてるのを、感じたり感じなかったり……。



