弘也自身がゲーム機になるのも、いいアイデアだと思ったんだけどな。いろいろと面白そうで。
でも弘也は、やっぱそっちを選ぶかー。
「ふ……っ、ぐすっ、うぅ……」
「うちのアホな弟が悪いな」
「げ、元気出せよ!」
師匠の背中を両サイドから、たかやんと桃太郎がさする。
それが、さらに、師匠の涙腺をゆるめた。
師匠はいつもおかしいんじゃないかってくらい笑ってるんですから、こんな時くらい思う存分泣いてください。
「画面には、もう、映らないんだ。あのキラキラした世界も、何も……っ」
小さく呟かれた師匠のか細い声を、私の耳だけがすくい取った。
その声に誘われて、無意識に、視界で師匠を捉えていた。
「師匠……?」
師匠は右手で脇腹に触れながら、左の人差し指で亀裂の入ったゲーム機の画面をなぞった。
画面の表面に、大粒の涙がこぼれる。



