空が闇色に彩られた、したたかな夜。
私は皆より一足先に、だだっ広い豪華なお風呂に入ってきた。
十蔵寺家がわざわざ準備してくれた浴衣を着て、揺れた髪をお団子に結い、皆のいる大部屋へ移動していた。
はぁ~、いい湯だったなぁ。
本当にここは、本物の旅館のようだな。
貸してくれた浴衣の背中部分には、「十蔵寺」と大々的に縫ってある。目立ちたがり屋かよ。
まさか、私達に十蔵寺家を宣伝してるのか?
火照った頬を、どこからか吹いてきた風がさする。
ポタリ、と前髪からひと粒の雫が落ちた。
大部屋の近くにある給湯室に明かりが点いていて、不思議に思いながら給湯室を覗いてみた。
「あ、真修じゃん」
「幸珀、どうしたの?」
「真修こそ、何してんの?」
給湯室にいたのは、真修1人だけだった。
真修の隣に寄ってみれば。
スマホで美味しい紅茶の淹れ方を模索していたらしい真修が、神雷メンバー全員分の紅茶を淹れていることに気づいた。



