BAD & BAD【Ⅱ】








空が闇色に彩られた、したたかな夜。




私は皆より一足先に、だだっ広い豪華なお風呂に入ってきた。


十蔵寺家がわざわざ準備してくれた浴衣を着て、揺れた髪をお団子に結い、皆のいる大部屋へ移動していた。



はぁ~、いい湯だったなぁ。




本当にここは、本物の旅館のようだな。


貸してくれた浴衣の背中部分には、「十蔵寺」と大々的に縫ってある。目立ちたがり屋かよ。



まさか、私達に十蔵寺家を宣伝してるのか?




火照った頬を、どこからか吹いてきた風がさする。


ポタリ、と前髪からひと粒の雫が落ちた。



大部屋の近くにある給湯室に明かりが点いていて、不思議に思いながら給湯室を覗いてみた。



「あ、真修じゃん」


「幸珀、どうしたの?」


「真修こそ、何してんの?」



給湯室にいたのは、真修1人だけだった。



真修の隣に寄ってみれば。

スマホで美味しい紅茶の淹れ方を模索していたらしい真修が、神雷メンバー全員分の紅茶を淹れていることに気づいた。