彼が歩いた場所は眩しいくらいきらめき、彼とすれ違えば一生分幸せになれ、彼に触れられたらキュン死して昇天する。


彼と一度でも会ってしまった女子達が、うっとりしながら冗談抜きでそう語っていたのを覚えている。



彼を王子様だと勘違いしている人達が気の毒すぎて、同情してしまう。




「もう、わかったろ?俺が真面目に朝から登校してきた理由が」


「うん、わかったよ。ありがとう、朔。そして、これからよろしく」


「ああ、ボディーガードしてやるよ」


「あんたの兄貴は厄介なんだから、油断しないでよね」


「わーってるよ」




なぜかスーツ姿でこの学校を訪れた彼は、コスモカラーの髪をなびかせている。



キリキリ胃を痛めながら警戒していたら、


「あっ」

「げ、見つかった」


彼の視界に誤って映り込んでしまった。



私は、すぐさま朔を盾にする。


無駄に背の高い朔の背中の後ろに隠れて、体を縮こませた。



私の存在がバレちゃった。くっそう。