足と腕を必死に振りながら、脳をぐるぐる回転させる。
すると、石ころにつまづいて、転びそうになった。
「きゃっ……!」
なに乙女チックな悲鳴出してんの、私。それどころじゃないっての。ここで転んだら、間違いなく1位にはなれない。あきらめる?そんな言葉、私の辞書には載ってない!絶対に起死回生の一手がある。
思考を止めるな、考えろ!
コンマ1秒にも満たない、短い瞬間の切れ端。
視界の隅に映ったのは、凛の骨ばった手だった。
「幸珀!」
どうして、凛はこの間にさっさとゴールしないの?
どうして、走るのをやめて私に手を差し伸べてるの?
どうして、アイス食べ放題がかかってるのに、私を優先して助けようとしてくれるの?
……愚問、だね。
聞かなくたって、わかるよ。
それは、凛が、私の優しい彼氏だからだ。
私が落とし穴にはまった時、凛だけが唯一助けようとしてくれた。そう、唯一。他の奴らは助けようとしてくれなかった。まじでありえない。



