BAD & BAD【Ⅱ】





足と腕を必死に振りながら、脳をぐるぐる回転させる。


すると、石ころにつまづいて、転びそうになった。



「きゃっ……!」



なに乙女チックな悲鳴出してんの、私。それどころじゃないっての。ここで転んだら、間違いなく1位にはなれない。あきらめる?そんな言葉、私の辞書には載ってない!絶対に起死回生の一手がある。



思考を止めるな、考えろ!


コンマ1秒にも満たない、短い瞬間の切れ端。



視界の隅に映ったのは、凛の骨ばった手だった。



「幸珀!」



どうして、凛はこの間にさっさとゴールしないの?


どうして、走るのをやめて私に手を差し伸べてるの?


どうして、アイス食べ放題がかかってるのに、私を優先して助けようとしてくれるの?




……愚問、だね。



聞かなくたって、わかるよ。

それは、凛が、私の優しい彼氏だからだ。



私が落とし穴にはまった時、凛だけが唯一助けようとしてくれた。そう、唯一。他の奴らは助けようとしてくれなかった。まじでありえない。