私は近くに落ちていた、長くて頑丈そうな木の枝を拾った。
吊り橋の入口の両脇に1本ずつそびえている樹木の幹から、同様に出口にもある2本の樹木まで繋がれている、2本のケーブルが曲線を描きながら吊り橋を支えている。
私の身長より少し高めの位置に結ばれたそのケーブルには、ジャンプすれば余裕で届く。
そのケーブルに頑丈で長めの枝を引っ掛けて、ケーブルのカーブを利用して、吊り橋の半分まで一気に移動する。
それが、私の奥の手。
ちょっと危ないかもだけど、師匠との約束のために裏技を使っちゃおう。
私は助走をつけて、吊り橋の入口で勢いよく跳んだ。
ケーブル上に木の枝を滑らせ、ロープウェイのように、予定通りに吊り橋の真ん中辺りまですぐに行けた。
「やった、成功だ!」
私って、忍者の生まれ変わりなんじゃないの?
自分の天才的才能に惚れ惚れしちゃう。
自画自賛しながら、残りの距離を敏感に警戒しつつ、早足で渡りきった。
「ふぅ、よかったぁ」
木の枝を森に返して、凛と弘也を追いかけた。



