落とし穴の側面の固い土をパンチして、八つ当たりしたい衝動を発散させた。


ん?この壁、妙にでこぼこしてる。



「……そうか」



パンチして気づいた。

落とし穴にはまった人のために、わざと側面を荒削りにしてることに。



地に埋まってる石や岩を危険性を承知であえて取り除かずに放置したり、ところどころ側面を大きく凹凸させたりして、登りやすくしてるんだ。



あとは、クライマーの運動センスと体力があれば……!



「これなら、私でも簡単に登りきれる……はず!」



方法を発見し、腕まくりをする。


根性の見せどころだ。

ファイトだ、自分!



さくっと地上に戻らないと、トップに返り咲けなくなる。


凛はまだしも、私達を召使い扱いしたがってる弘也を1番にゴールさせてたまるか。容赦なく阻止してやる。



軽くストレッチをしてから、半分あらわになった岩に足をかけ、器用にスムーズに登っていく。


この調子なら、すぐに地上に帰還できるかも。




地上まであと半分を切った時。



「あれ、幸珀?」



ようやくここまでやって来た師匠が、ロッククライミング中の私に声をかけてきた。