お互いに手を伸ばしただけじゃ、届くわけがない。
落とし穴は、それほど深いんだ。
「あとちょっとなのに」
「これのどこがちょっとだ。ちっとも惜しくないよ」
あんたの距離感、どうなってんだよ。
それとも、私の腕がキリンの首みたいに長いとでも思ってたの?それはそれでひどいな。
「凛、そこで何して……って、うわー!?こ、幸珀!?」
「弘也も追いつきやがった。くそっ。もっと綱渡りで手こずれよ自己中野郎」
「本音ダダ漏れてるよ~。わざと?わざとなの?」
せっかくトップ独走してたのに、落とし穴で足止めくらったせいで早くもトップ陥落。短い1位だった。
「幸珀、落とし穴に落っこちたの?」
「笑うな」
「だっさ~」
「やかましいわ」
恋する乙女の理想である凛とは比べものにならない、本物のガキだな。



