山の自然を活かした、風流な庭。露天風呂付きの、疲れを存分に癒せそうな風呂場。荷物を置いた部屋の隣には、使い方はわからないけど囲炉裏のある広間もあった。
他にも、少人数用の小部屋や、何から何まで作れそうな調理室や、風呂場とは別に足湯もできる場所もあった。
「どう思いますか、桃太郎氏」
「ここが別荘だなんて信じられません。老舗旅館の間違いじゃないのかと推測します。幸珀氏はどう思いますか」
「激しく同意です」
旅館の従業員……もとい十蔵寺家に仕える使用人すらいない、完全貸し切りの別荘全体をほぼ見終え、
最初の大部屋に戻ってきた私達は、お金持ちの剛に疑いの眼を向けていた。
探検中、皆はずっと口をあんぐりと開けて、絶句状態だった。
無理もない。はしゃぐ気も吸い尽くされるほど、ここは素晴らしすぎる。
首長、私達に贅沢をありがとう!
「ここ、本当に別荘なの?」
「嘘ついてどうすんだよ」
「なんで!?」
「なんでの意味がわかんねぇよ。ちゃんと言え」
「なんで旅館やらないの!?もったいない!!」
「テンション高ぇな。一旦落ち着け」
私も、こんな素敵な別荘が欲しい人生だった……。



