久しぶりに食堂でも近くに座った。
 気づかれないように会話に耳をそばだてる。

 かろうじて聞こえた二人の言葉。

「ゴメン。加奈ちん。
 ちょっと会議室で寝てくる。」

「うん。会議室1を取っておくね。
 そこ使って。」

 かなり疲れているようだった。
 南田は急いで会議室1へ向かった。

 どこにあるのか迷いながらも見つけた会議室1。
 その近くに行くと前方から奥村が歩いてきた。

 やはり疲れているようだ。
 覇気が感じられなかった。

 話したくて来たのに声をかけられずにいると、奥村は南田を見て力なく笑った。
 そしてそのまま会議室へ入って行く。

 南田は抑えきれずに奥村の後に続いた。
 会議室に入るとすぐに認証の機械が目に飛び込んだ。

 え?と振り返った奥村に南田は自分の気持ちに抗えなくなり、くちびるを重ねた。

 手を取り、認証する。

 ピッ…ピー。「認証しました。」

「どうして…。」

 奥村が戸惑った声を発した。
 当然の疑問だろう。

 また衝動的な行動を起こしてしまった…。

「認証したいという顔をしていた。」

 それは僕だ。

「そんなわけ…。」

 奥村は不満げな声を漏らした。
 目が合うと疲れが顕著に表れている奥村に胸が苦しくなった。

「頑張り過ぎだ。」

 奥村の頭を軽くポンポンとして南田は会議室を出て行った。

 南田は決意していた。

 奥村さんは僕のものだと。