この状況は、なんだか、八年前のあの日に似ている。
あのときも、こんな感じだった。
『あ……』
一音しか発せられずに、会話もなく終わった、最初で最後の初恋。
“あのときの少年”に会えたのは、たった一日。
辛さを感じる間もなく、ほのかな甘さだけを残して、あどけない思い出の欠片となった。
けれど、二度目の恋は、甘さの少ないビターな味。
「――あきらめたほうがいいんじゃない?」
体育の授業中。
体育館の脇で一緒に体育座りしている依世ちゃんの、一刀両断するような声で、八年前の記憶から目を覚ます。
この恋を、あきらめる!?
「む、無理だよ。あきらめる方法なんて知らないし……」
「簡単じゃん。先生に『見学します』って言うだけ」
「……へ?」
け、見学?
何を言ってるの?



