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 夕方過ぎに相島の家に戻ってきた。運転で疲れていると思い、家に寄ることは遠慮しようかと思ったが、相島に寄っていけと言われたら断れなかった。

「おじゃましまーす!」

 いつ来ても相島の部屋は片付いている。というか無駄なものがない。

「っあー!疲れた!」
「運転ありがとう!楽しかった!」

 ソファベッドに寝転がる相島は、お茶を注ごうとする紗弥を見つめて口を開いた。

「…茶なんていいから、ちょっと来い。」
「え?」
「早く。」
「?」

 わけもわからずソファベッドに近寄り、そのまま腰を下ろした。すると相島は一度起き上がってから、紗弥の膝を枕にして横になる。

「!?相島さん!?」
「疲れた!」

 仰向け状態の相島の目が、紗弥の赤い頬をしっかりと見つめている、気がする。

「だから癒してくんね?」
「へっ!?」
「外のデートじゃできなかったこと、してほしいんだけど?」
「ハグ…は、この体制じゃちょっと…。」
「んじゃ起きる。」

 すっと起きて、相島は紗弥に向かい合った。そして相島の頭はすとんと紗弥の肩に落ちてきた。そのまま紗弥は相島の背中に手を回す。すると相島の腕も紗弥の背中に回った。

「…疲れさせちゃってごめんなさい。」
「運転で疲れたんじゃねーし。」
「え?」
「我慢すんので疲れた。」
「我慢?」
「…人前でべたべたすんの、全然趣味じゃねーからしたくねーけど、触りたいって思った瞬間に触れねぇって思うの、我慢じゃね?」

 耳元で響く相島の声のせいで、耳から熱が全身に伝わっていく。