そして、環奈を教室に送り届けると同時に、予鈴が鳴ってしまった。
「う、嘘だろーっ!!」
「ちょっと、そんな大きな声出してどうしたの?」
笑顔を引き攣らせ、迷惑そうに俺を振り返るのは俺の前の席に座る雪人。
こいつ……標準笑顔なんだけど、その裏に本音がチラチラ見え隠れしてんだよ。
口元ピクピクしてるからたぶん、読書邪魔しやがって……の顔だ、これ。
「雪人、世界の終わりだ……」
「……八雲、頭どっかで打ってきた?」
雪人の毒舌もスルーする。
本当に、それどころじゃない。
これが、叫ばずにいられるかよ?
俺、泪との約束を守れなかったんだぞ?
会いたくてたまんねーのに、待たせてるかもしれないのに、俺は……最低だ。
『相変わらず女癖悪いな……ほどほどにしないと、痛い目見るよ』
ふと、雪人に言われた言葉を思い出す。
これのことか、痛い目みるって……。
俺が、今まで適当な付き合いしてきたから……。
「……俺はバカだ」
「……その発言がすでにおバカさんだよ。それで、急にどうしたの」
「雪人、俺今すげー自分を殴りたいわ」
「それじゃ、代わりに俺が……」
「……それはヤメロ」
ニコニコと拳を構え始める雪人。
その拳を掴んで止めると、俺は顔を引き攣らせた。
「まさか、冗談だよ?」
「…………」
いやいや……マジだったろ、絶対。
顔が本気で楽しそうだったし。
雪人って黒いな、本気で。
今更だけど、俺……なんでこんな腹黒と親友なんだ?