「……いや、恋する乙女じゃあるまいし、キモイぞ和樹」

「急に冷めんなや!!ここは、感動のハグだろ!?」

「え……しねーよ、そんなもん」



なんで、俺が男にハグしなきゃならんのだ。

でも、泣きそうな顔してくるし……。

なんか飼い主に必死に尻尾振る柴犬みてー。



「和樹は、本当に弄りがいあるよね」

「単に、オーバーリアクションなだけだろ」

「それが見てて暇つぶしになるでしょ」



暇つぶしって幸人……ひでぇな。

でも、からかいたくなる幸人の気持ちも分かる気がする。

これは、なかなかに楽しい……なんて。

俺、幸人みてーなサディストじゃないはずなんだけどな。



「ま、頑張んなよ八雲。当たって砕けたら……骨くらいは拾ってあげるから」


「そこまで砕けたくねーよ!!」


黒い笑みに、俺は文句を言う。


骨なんて、縁起でもない。

この、腹黒王子め!!



「あ、それを和樹に食べさせればいいか」

「は!?なんで俺が八雲の骨を食べる話になってんの!?」

「え、だって和樹、犬でしょ。はい、くるっと回ってワンッて言ってみて」

「誰がやるかーっ!!」


おいおい、何の話してんだよ……。

でもまぁ、こいつらとバカしてんのも良いな。

お陰様で、さっきまでのジメジメした俺もどっかに吹っ飛んだみたいだ。