「うぶな子、うぶ子ちゃんに決まってんだろ」

「変なあだ名で呼ぶなぁー!」

「はいはい、ぶっくく……」


怒るあたしを楽しそうに見つめて来るから辛い。

この笑顔があたしは好きなんだもん。

だから、怒るに怒れない。


心臓がドキドキして、八雲のことをどんどん好きになってくのが分かるんだ。



「本当、泪といると楽しいよ、俺」

「うぐっ……それは、どうも」


いきなり、素直になられると照れる。

八雲は、あたしをその言葉で、仕草で翻弄するんだ。

その度に、余裕なんて無くなって……。


「八雲は、いつも平然としてて、ちょっと悔しいな」

「俺が、平然そうに見えるわけ?」

「ん?うん、どう見たって平然……」


言いかけると、不意にあたしの視界に影が指した。

八雲が狭いカヌーの上で、あたしに覆いかぶさる。


「や、八雲!?」

「俺はさ……」


その反動でカヌーが揺れ、あたしは後ろに倒れてしまった。

そんなあたしの顔のすぐ横に手をつくと、八雲がグンと顔を近づけてきた。