おはよう、きみが好きです




「なにそれ、環奈聞いてない!!」


すると、斜め前の席の、可愛らしい女の子が声を上げた。

そして、くるくるした髪を揺らしながら、あたしの席にやってくると、仁王立ちする。



「環奈、聞いてない!!」


「えっと……」



2度、言われてしまった。

うわっ……今あたし、ジロりと睨まれてる……。

環奈ちゃん……だっけ?

どうしよう、八雲のことが明らか好きな子だよね。



「ねぇ八雲、環奈の方が可愛いのに、こんなのがいいのぉ?」



……こんなのって……。

はは、どうせあたしはちんちくりんの平凡な女ですよ。

でも、悪口もここまでくると清々しいなぁ。



「……そー、悪いな環奈。俺、こんなのがいいの」


「えっ……八雲??」



八雲はくしゃりとあたしの前髪を軽く握った。

その指先が、あたしに触れるたびに伝わってくる。

八雲流に言うのなら、アンタが好きだよって。


「今回は、八雲も本気らしいしね」


すると、今度は人混みをかき分けて、紫藤くんがやってくる。

あたしと八雲を見比べて、少し困ったように笑った。


「こんな所で独占欲丸出しにしたら、神崎さんに被害被るだろう、八雲」


な、なんて神様なんだっ。

気の配れる、スマート王子様だ!!

とにかく、紫藤くんはなにもかもが完璧すぎる!