「なあ、松下。
今日はあの子のとこ行かなくていいのかぁー?」
よくつるむ、というか絡んでくる渡辺。
空気読めよ。何で璃乃のとこに行けねえと思ってんだ。
とにかくうぜぇ。
「ああー…おう」
なんて適当に返すと
「あんなに落とす落とすって意気込んでたのに。俺負けるじゃねーかよー」
「おー坂本、1週間食堂奢れよなー」
ちっと睨む坂本。
いや…俺は関係ねえし。お前らが勝手に便乗して賭けてただけだろ。
機嫌の良くない俺を見て怜央は、まあまあとなだめる。
そんな時
「ちょっと待って、璃乃!!」
それは呼び慣れた名前。
聞き間違えるはずがない。
…今の会話、聞かれたのか…?
急いで教室を出て追いかける。
前には同じように走っている悠子ちゃん。
「…!」
久しぶりに見た璃乃の姿は酷く傷付いていて側には心配そうに顔を覗く、1人の男がいた。
彼が声をかけると璃乃はすくっと立ち上がって少しだけ落ち着いたような雰囲気だった。
俺は璃乃を傷付ける存在で、彼が落ち着かせる存在なのか。
俺はその場から動けなくなった。
近付けなくなった、彼女の視界に入りたくなかった。
「っおい、月星…!」
後ろから追いかけてきた怜央が俺の肩を叩く。
「…!あれ…」
「…ああ。もういいんだ」
仲良さそうに歩く璃乃と悠子ちゃんとあの男を怜央も見たようで、俺に良いのか?という視線を送ってくる。
ゆっくり首を縦に振って足を踏み出す。
それからはとにかく教室までの距離が長かった。
なかなか教室が見えない。足が鉛のように重かった。

