ひな様が、シーエン王国に嫁ぐことになるかもしれないということは、おそらくひな様自身に伝えられるより早くに知った。
王さまとしても、本来なら不本意な事だろう。
ひな様は、アルバーナの正式な後継者だったのですから。


しかし、ダリウスとの戦争をきっかけに全てが崩れ始めた。
アルバーナはシーエン王国に協力を要請しなくてはならなくなり、そのために、せっかく取り戻したひな様を差し出さなければならなくなったのだから。




なんの為に、取り戻したのか。
そんな思いは、誰しもが持っている。


それでも、ダリウスにいるよりは幸せなのだと。
友好を結んでいるシーエンならばと、自身に言い聞かせ。



王さまも、苦渋の決断だったに違いない。
それをわかっているからこそ、私はなにも言えなかった。




言ったところで、事実が変わることはない。
きっと、そんな諦めにも似た感情もあったのだ。



だが、不覚だったのは。



ひな様と共に行くのが、私ではなかったことだ。