虫はあっという間にあたしの右腕を食いつくし、そしてサナギなった。


蝶になる前のサナギが、床にコロンッと転がっている。


それはあたしの腕くらいの大きさがある。


唖然としている間に、今度は左腕から同じような虫が這い出て来た。


慌てて振り払おうとするが、その虫はあたしの腕に食いついてはなれない。


潰してやろうとするが、骨しか残っていない右腕じゃそんな事はできなかった。


虫はどんどん大きくなり、あっという間に腕を食いつくした。


なにがどうなっているか理解するより先に、胸から、両足から、そして顔から……虫が出て来て、そしてあたしを食べ始めた。


消えて行く意識の中、あたしはぼんやりとテレビ番組の内容を思い出していた。


人間に寄生している虫がいるんだって。


その中でも最も怖い寄生虫は、人間を最後まで食べつくしてしまうらしい。


だけど周囲の人たちはそれに気が付かない。


だって、虫はサナギになり、成虫になったときに……元の人間の形になるからね。


そして何事もなかったかのように、その人間になりきって生活をしているらしいよ。


そんな、嘘みたいな話をして笑っていたスタジオの芸能人。


そして、完全に意識を手放す寸前、一番最初のサナギが殻を破り、あたしの『右腕』の形になったのを見た……。