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克哉の家に行くのは、あたしは初めてだった。


真尋や克哉は何度か訪れた事があるようで、あたしの前を歩いてくれた。


学校からそれほど遠くない大きな一軒家が克哉の家だった。


「克哉の家って裕福なんだね」


大きな門構えを見て、あたしは真尋にそう言った。


「うん。お父さんが資産家なの。だから克哉は少し我儘に育ったみたい」


真尋はそう返事をして、懐かしそうに笑った。


あたしは病院で見た克哉の両親を思い出しながら、2人後に続いた。


玄関に出て来てくれたのは克哉の母親だった。


すごく疲れた顔をしていて、1日でとてもやつれた気がする。


しかしあたしたちの顔を見ると、笑顔で家に入れてくれた。


広い廊下を歩き、和室の客間に通された。


大きなテーブルが中央に置かれていて、昔が舞台のアニメ映画なんかに出てきそうな部屋だ。


だけど、今日はお客さんとしてここへ来たわけじゃない。


お茶を用意するという克哉の母親を京介が止めた。


「克哉の部屋を少し見たいんです」


「克哉の部屋を?」


母親はさすがに困ったような顔を浮かべた。