「サナギ、大丈夫か?」


京介の手が、いつもより優しく丁寧にあたしの頭を撫でる。


「うん……」


鼻をすすりあげながらそう返事をしても、ただの強がりにしか聞こえなかっただろう。


「早く行こう。克哉もきっと俺たちに会いたがってる」


京介に背中を押されるようにして、あたしは無理矢理涙をひっこめた。


そして、ノックする……。


「はい」


中から弱弱しい声が聞こえて来て、あたしの心臓はドクンッと大きく跳ねた。


冗談じゃなかったのだと、わかってしまったから。


「失礼します」


京介がそう言い、ドアを開ける。


その瞬間……ベッドの上の白いシーツが見えた。


顔にも白い布がかけられていて、その横には疲れた表情の克哉の両親と……しゃがみ込んだまま泣いている真尋がいた。


それを見た途端、あたしの足は動かなくなった。


前へ進むのを全身が否定している。


見たくない。


見ちゃダメだ。