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結局、あたしは制服を持ってお母さんの運転する車の助手席に乗っていた。


赤信号でいちいち停止する車がうっとうしい。


克哉も真尋もまだ病院にいるらしく、一秒でも早く会いに行きたい。


そして『冗談でした!』と、笑って言う顔が見たかった。


『克哉はすっかり元気になってね。そしたらサナギの事をからかってやろうって言いだして』


『なんだよ。真尋だってノリノリだっただろ』


そんな、いつもの2人が見たい。


ようやく病院に到着してあたしは車から飛び降りた。


正面入り口はまだ開いていないから、走って裏口へと回り克哉の部屋番号を聞いた。


エスカレーターでその階まで行き……扉が開いた瞬間、嫌な予感が胸をよぎった。


院内は静まり返っていて、患者さんたちの姿が見えない。


まだ朝の早い時間だから当然なのだけれど、喧騒のない院内はあたしの不安を加速させていくだけだった。


足早に廊下を抜けて言われた病室の前で立ち止まる。


ノックをしようとした手が空中で止まる。


ノックしてしまったら現実を受け入れるしかない。


その心の準備はまだまだ出来ていなかった。


「サナギ?」


後ろからそう声をかけられてあたしはビクッと身をふるわれて振り向いた。


そこには、昨日と同じ服を着た京介が立っていて、なぜだかわからないけれど一気に涙があふれ出した。